大判例

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大阪地方裁判所 昭和59年(ワ)3447号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

ところで、被告らは、加害車の衝突と訴外人の死亡との間に因果関係がない旨主張するが、前記証拠によれば、さしたる外傷のない訴外人の死因は頸部強打により甲状軟骨を骨折し、この衝撃で脳挫傷を起こしたことに求められること、被害車は、まず道路左端ガードロープに左前輪タイヤ側面ホイル、左後輪タイヤ側面ホイルを擦過し、続いて走行車線を先行する大型トレーラーの左後部バンパーに右前部が追突、その衝撃により、右前輪車軸を後方に押しもどさせ、また被害車左前輪により長さ約4.5メートルのタイヤ痕を路上に残していること、その後、被害車は右にハンドルを切つた状態で進行し、左前輪タイヤによつて長さ8.9メートルのタイヤ痕を路上に残して停止した状態の際、右前フェンダー部分に加害車前部が衝突し、その衝突の勢いで被害車は約二二メートル左前横へ移動して停止し、加害車は衝突後約14.1メートル前進し分離帯に設置してあるガードレールに右前部を衝突させた状態で停止したこと、加害車は時速約一一〇キロメートルの速度で追越車線を進行し、衝突地点より約三四メートル手前で危険を感じて急制動の措置がとられたものの、スリップ痕も残すことなく進行し、被害車と衝突していること、見分時における被害車の状態をみると、被害車運転席ハンドルは約四五度左に切られた状態で止まり、フロントガラスは割れずにはずれたのみであり、ハンドルは六時の方向がほんのわずか前方に押し曲げられ、ハンドルの一二時方向には外周部に六センチメートルにわたり訴外人が着用していた白色ランニングシャツの繊維片と思われる白色繊維片が付着していたことが認められ、右事実によれば、訴外人の死因となつた甲状軟骨の骨折は被害車運転席ハンドルに訴外人の頸部を衝突させた際に生じたものと推認されるところ、訴外人が頸部を被害車運転席ハンドルに衝突させた原因としては、被害車右前部と大型トレーラー左後部との衝突もしくは加害車前部と被害車右前フェンダー部との衝突及びその後の衝撃が考えられるものの、被害車と大型トレーラーないし加害車との衝突の程度を対比すれば、両車両が同一方向に進行し、かつタイヤ痕の長さが4.5メートル残つていたにすぎない大型トレーラーとの衝突より、停止している被害車に時速約一一〇キロメートルの速度で衝突し、その衝撃により被害車が約二二メートル横に移動した加害車との衝突及びその後の衝撃の方がより強力であつたものと推認され、また、被害車は大型トレーラーとの衝突によつて右前輪車軸を後方に押しもどされ、そのために右ハンドルを切つた状態で進行しているのに、見分時においては被害車運転席ハンドルが約四五度左に切られた状態であつたことから、訴外人は大型トレーラーとの衝突後、いまだ意識を失なうことなくハンドルを左に切つていることが推認され、そうすると、訴外人が頸部を被害車運転席ハンドルに衝突させたのは、被害車と大型トレーラーとの衝突の際よりも、加害車との衝突の際に生じたものと考えられ、そうすると、訴外人の死と加害車の被害車への衝突及びその衝撃との間には因果関係があるものといわなければならない。

しかしながら、右事実によれば、被害車は大型トレーラーとの衝突により、右前輪車軸を後方に押しもどされる程度の相当な衝撃を受けており、また、衝突による衝撃の方向と訴外人の死因とを対比すれば、この点のみでは、約六〇度の角度で被害車右前側面部に衝突した加害車の衝撃よりも、追突した大型トレーラーの衝撃の方が訴外人の死因である甲状軟骨の骨折が生ずる可能性が高いことも否定できないのであつて、損害の公平な分担という不法行為制度趣旨に鑑みれば、因果関係の証明度に応じて訴外人及び原告らの損害のうち、その八割を本件事故と相当因果関係にある損害とするのが相当と認められる。 (坂井良和)

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